ーー小林さんは、どういったきっかけで〈eseence:〉にいらしたのでしょうか。

小林麻祐子(以下、小林)  夫からのプレゼントでした。高城さんが〈eseence:〉を起業した際にモニターを募っていて、高城さんと繋がりがあった夫が「興味があったら、行ってみる?」と、聞いてくれたんです。その頃、ひどい肌荒れで悩んでいたこともあって、活躍するヘアメイクさんになら相談が出来るんじゃないかと思いました。

ーーなるほど。ということは〈eseence:〉の立ち上げと同時にいらっしゃったお客様なんですね。

小林  そういうことになるかと思います。

ーーその段階では、このサロンで何がどうなるか、まだわからなかったのではないですか?

小林  そうですね。「メイクで可愛くなれるのかな?」くらいに思っていました。

ーー当時から〈eseence:〉におけるセッションの流れは、出来上がっていたのでしょうか。

高城裕子(以下、高城)  現在はセッション前のヒアリングで、100問ほどの質問をさせていただき、心理分析も行っていますが、当時は今ほど内容が確立されていませんでしたね。

小林 それは知らなかったです。私のときは、10問くらいだったと思います。

ーーメソッドが出来上がる前から通われていたんですね。

高城  ちなみに〈eseence:〉に「継続して通う」というのも、麻祐子さんの一言から始まったんです。立ち上げ当初、セッションは一回きりの想定でいましたが、麻祐子さんに「カットがとても良かったんですけど、次はどうしたらいいですか?」と言っていただけたことがきっかけで、さらにお客様の変化に寄り添っていくことができると気が付き、継続のコースをつくることになりました。

ーー小林さんの最初のセッションは〈eseence:〉にとっても初めてのセッションだったわけですが、印象的だったことはありますか?

小林  芯の通ったかっこいい女性に憧れがあったので、凛としたイメージでメイクをしていただいて。仕上がりがいつもと全然違うというのはもちろんですが「こんなに簡単でいいんだ」というのが衝撃でした。しかも、イメージした通りになっているんです。すごく簡単で時間もかからず、自分の魅力を表現できるんだな、と。

高城  私がやっているのは「そう見えたらいい」という一点に集中していくことなんです。その人をつくる上で最も似合っていて、その人らしく馴染むものを使います。

ーー使うべきものも明確だと。

小林  そうです。通い始めの頃は、メイクが楽しくなってきたのもあり、自分でもやってみようと、指定とは違うものを買ってみたりもしたんですよ。でも、やっぱりどこか違って。

高城  一番似合っている色って、その人に溶けてパッと綺麗になる。花が咲くような感覚がするんですね。「メイクアップ」と言いますが、本当に、メイクで魅力がステージ“アップ”する。そういう色や道具を精緻に選んでいます。

小林  メイクのアイテムが可愛いかったり、メイクそのものが可愛いというのはあるんです。でも、高城さんのメイクは「全体が素敵」という風に仕上がるんです。

ーーセッションはどのように進んでいったのでしょうか?

小林  ここに来るまで、髪質にもすごく悩んでいて。乾燥毛でくせ毛なので、どこの美容院に行ってもしっくり来ないし、ましてや肩より上に切るなんて考えられなかったんです。髪に関してはもう、ほとんど諦めているような状態でしたが、高城さんにカットしていただいてからは、ショートも全然大丈夫になりました。くせ毛なのに、アイロンやドライヤーを頑張らなくてもよくなって、私の髪の概念が変わりました。

高城  感覚的には彫刻に近いです。その人にとって自然な状態で、必要なシルエットだけを残します。形状記憶のような仕上がりになりますね。毛量や髪質、髪の流れ、頭の形も人によって全く違うので、どういう風に見せたいかだけをイメージして切っています。

小林  だから切りたてはもちろん、伸びても良いんです。すごく不思議な感覚です。夜にきちんと乾かして寝たら、朝のセットは3分かかるかどうかというくらいですね。寝癖も変になりません。むしろ、クセが生かされていて良い感じで。自分のくせ毛にも可能性があるんだと知りました。

ーーセッションを継続していくことで、外見的な部分だけではなく、内面にも作用はありましたか?

小林  先日、知人から「華がありますよね」と言っていただいて、そんな経験が人生で一度もなかったので驚きました。

ーー人からなかなか言われない言葉ですよね。

小林  それまでの自分にとって、メイクは「可愛い人がするもの」であって、自分はちょっと人前に出るから整えておかなければ、というものだったんです。それが、人からそんな風に言っていただけるようになって、そのこと自体ももちろん嬉しいですが、セルフイメージが切り替わったというか「自分自身が変われるんだ」と思えるようになりました。

ーー高城さんは、小林さんの魅力に、どのようにアプローチされているのでしょうか。

高城  人によってその引き出し方は異なりますが、人の目を惹くように、何かが似合うように作るというのは、そこまで難しいことではなくて。何がその人の美しさを引き出してくれるのかというと「自覚」。自分の魅力を理解することなんです。なので、まず重視していたのは、麻祐子さんの魅力やポテンシャルについて、その本質的な部分をしっかりとお伝えしていくことでした。

小林  最初は「いやいや、私なんて」という感じがしていたのですが、これまでの自分のことを振り返ったり、周りの方から言っていただけることを高城さんと話したりしていくうちに、少しずつ「そうなのかもしれない」と、自分を客観的に見られるようになっていきました。

ーー小林さんにとって、今の〈eseence:〉はどのような場所になっていますか?

小林  一言で言うならば、自分に立ち返る場所でしょうか。今振り返っても、出産後に〈eseence:〉がなかったら、ちょっと自分がどうなっていたかわからないです。

ーーなぜ、このサロンがそういう場所になり得たんでしょう。

小林  妊娠・出産・育児のときが人生で一番大変だったのですが、そこに仕事のハードな時期まで重なってしまって。授乳をしなきゃいけない、でも、Zoomで打ち合わせもしなきゃいけない。夫も夫で大変な時期だったので、大変だとも言えない。我慢をしているとか、堪えているとか、そんなことを考える暇もなく、自分がちゃんとするしかないと思っていて。やっと〈eseence:〉に向かえることにはなったものの、仕事をしながら慌ててタクシーに乗り、車内でも作業をしていたところで、メイクが出来ていない、眉すら描けていないということに気が付いて。高城さんに「すいません。すっぴんですが、行きます」と連絡をして。どうにか〈eseence:〉に辿り着いて、出迎えてくれた高城さんが「麻祐子さん、優勝です。金メダルです」と言ってくださったのが、なんとも言えない気持ちで、思わず涙してしまいました。「私、結構大変だったんだ」とやっと気が付いたんですね。

高城  追い詰められた、申し訳なさそうな表情で、開封しかけのコンビニのサンドイッチを持って来られましたよね。産後の女性がどれだけ大変なのかということです。子供にかかりっきりで、ご飯を食べる時間も、納得のいくセルフメイクをする時間もなければ、自分が何者かがわからなくなってしまう。お仕事も大変な時期で極限状態にいるなか、それでも「メイクが出来ていないです」と連絡をくださる、その細やかさや、相手が第一というお人柄。そんな時でもなお、お仕事に対応できる自分をつくるために〈eseence:〉に来ようと思ってくださる意識。そのすべてが伝わってきて、心から「これ以上はありません、金メダルです」と。

小林  自分のことを省みる時間もなく、目の前のことをやるしかない。家庭でも会社でも役割をしっかりとこなさなければならなかった時期に、自分を振り返る時間、何でも話せる環境があったことにすごく助けられました。そんな時期を乗り越えたことで、自分を大事にする時間は必要だし、自分をもっと大事にしてもいいんだと思えるようになりましたね。

ーー最後に〈eseence:〉にちなんで、小林さんが「本質」として大切にされていることを教えてください。

小林  コミュニケーションです。高城さんとも、仕事のチームとも、お客様ともそうですが、それがすべてだと思っています。些細な一言を言うか言わないか、どういうお声がけをするかで、私自身が変わっていったように、その後の展開も、その人との関わり方も変わっていくんです。

高城  麻祐子さんは、誰かを照らす太陽のような方だと思っています。自分を大切にされているからこそ、人を慮ることができる。私も麻祐子さんから、たくさんのことを学ばせていただいています。

view more